『うつ・自殺予防マニュアル』

現在、うつ病に関する本を集中的に読み進めており、特に自殺と強く関係づけたものを求めているものであるが、なかでもこの本はよさそうである。

序盤の以下の5つのプログラムが実に興味深い。
・悲しみのプログラム
・不安のプログラム
・怒りのプログラム
・驚きのプログラム
・焦りのプログラム

これらは原始、人が周りの危機に対するために備わったものとし、たとえば不安のプログラムについては、未来の危険を察知するもので
《不安のプログラムが働くと、私たちは将来の出来事の仲で自分に不利な場面を取り出して、その展開を想像します。しかも常に悪い条件を想定して、シミレーションを続けていくのです。もしその結果、命が危ないという結論に達したとすれば、その行為は避けなけれればなりません。》

読み始めたばかりであるが、この原始の人の危機意識を持ち込んでいることは興味深く、説得力もある。尤も、悲しみのプログラムから引用しなかったのは、少々わかりづらかったことによるが、いずれにせよ、こうしたプログラムが、精神疲労の蓄積を経て、誤作動を起したというものが本旨である。
それと、自己犠牲のくだりであるが、自分がいなくなれば皆が助かる/自分がいれば皆に迷惑がかかるという考えに凝り固まるという点については、これはかなり差し迫った段階なのであるが、やはりここで「がんばれ」という励ましはマズイであろう。最後のトリガーを引くのは近い者という皮肉がある。視野狭窄という状態であるため、普通の人に対するような接し方は取り返しのつかないことになろう。日ごろから、「人の気も知らないで」「おせっかい」「自分の考えを押し付け」と言われている人は、よかれと思っていても、本人と関われば大事になる。たとえばたまに、その接し方を見て、この人は猫という動物がよくわかっているのかなと感ずるときがあるが、猫を犬のように思っている人は危険視すべきである。猫を猫として接することができる人間は意外と(でもないか)少ないものである。(アメショーはほとんど犬に近い動物と思っているが…)

うつ症状に関しては多くの本が出ているが、もひとつよくわからない表現が多い。得てしてこういう場合は著者もわかっていないのである。陸上自衛隊のカウンセラーという異色の著者だけに、原始の人のプログラムという発想も出てきたのだろう。