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厚生年金特例法

結局またひっくり返って戻った(微妙に一歩進む)。年金保険料の徴収が、また一問題なのである。昨日の関連記事。年金に関し国民の関心が薄かった期間が長く、政府も軽視していたことが一番の原因だが、会社もまた同様である。ただ、不幸にも倒産した場合に、特別徴収のかたちで完納となるケースも多いと思われ、実被害は少ないのではなかろうか。だが、この記事のような処理であれば、その記録は実態でないものが正当なものとなる。

簡潔な説明の社会保険庁ホームページから

条文は読みにくいが、法律解釈で難しい点がある。

第一条一項但し書き
「ただし、特例対象者が、当該事業主が当該義務を履行していないことを知り、又は知り得る状態であったと認められる場合には、この限りでない。」

趣旨からして絶対的に近いかたちで記録は回復されるとみうけられるものの、黙認とみなされると駄目だということである。これは日本的労使関係にあってはかなりの障害である。個別労使紛争も同じだか、障害といっていては何も解決しない(しかし泣き寝入りは楽)。日本的労使関係も一部では完全に崩壊しているが、まだ多くは残っている。最近私は山本七平をまた読み出したところだが、今の所個々の事案ではいったんは労使関係の破綻が避けられず、そして回復の道筋ができればと願う。

〔参考〕
本法では次の規定がある。

≪(確認の請求)
第31条 被保険者又は被保険者であつた者は、いつでも、第18条第1項(註−資格の取得、喪失のこと)の規定による確認を請求することができる。≫

このいつでも被保険者又は被保険者であつた者は確認請求権があるのだから、それを行使していない以上保護されるものではないという司法判断がたまに下るときがある。
07年12月28日 | Category: General
Posted by: roumushi
07年12月23日

派遣事業の適正化

人材派遣業者が軒並みに増加し、多くは経営難に陥っているのだが、交流会などで話をしてみるとその開設意欲は感心できないものにあることがやはり多かった。
その羅針盤となっていたのがGWGのような経営であろう。すなわち、「法令違反や経営がズサンであればあるほど儲かっている」という経営の現実である。

コンピテンシーという人事用語があり、一時期流行らせようとする動きがあったが、それは「できる人」を基準に評価設定や教育システムを作るという内容である。私は人事において外来語を嫌うため加工するが、それなりに理に叶う手法といえる。
この発想から、「儲かっている企業」を基準に同種の経営をやればいいということになる。世の常として、朱に交われば赤くなる、悪貨が良貨を駆逐する謂われの通り、斯業界はますます無法地帯と化した。

派遣業者の存在も大きくなり、かつて社会保険の存在を否定し、自らの企業年金で足りるとして国の干渉を拒んだ大手も、社会的存在を認識するようになった。社会保険労務士が派遣業者と積極的に顧問契約し出したのもその頃からであろう。いずれにせよ、派遣業界の常識は国家の常識とはことごとく反撥するまでになっていたわけである。こういう手合いには、戦中ほどではないにしろ、手厳しいという伝統がある。

さて、GWGを対岸の火事とみて、派遣業界は適正化していくのであろうか。既に、業界内部からはGWGに否定的なコメントが上がっている。GWGに続けとばかりに開設した経営者は‥‥。
07年12月23日 | Category: General
Posted by: roumushi
07年12月20日

改正パート労働法

20年4月施行ですが、従来はあくまでも「パート」という固定的な概念での改善措置でありましたが(同時に、実効性がほとんど無かった)、今改正はそのような固定的なイメージの「パート」という存在から出発していません。

改正目的は、店長クラスなど正社員同等の責任ポストを受け持つパートが増えてきましたが、その処遇は「パート扱い」にすぎないため、法的整備をする必要が生じたとされています。労務管理でできるのですが、残念ながら軽快機敏な経営者が少ないものと思われます。したがって、改正パート労働法を遵守すれば、社会保険労務士費用が少なくて済むというもんで‥‥(笑)。

1、「パート」の定義は「通常労働者に比して短い労働時間の者」ですが、従来は「通常労働者」を正社員としていたのに対し、今回からは社会通念上「通常」とされる労働者とされました。事業所単位で(※会社単位でない)、業務の種類ごとに、個別判定していきます。

2、労働条件の明示
労働基準法の規定に加え、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」の3点につき、文書交付。罰則10万、労働基準法の規定もならプラス30万。
納得して働いてもらうと経営も円滑に。

3、待遇の決定についての説明義務
これは求められた場合ですが、「説明義務」はますます経営者に必修の課題ですので、日頃から訓練を。

4、賃金の決定方法「第9条」
これは努力義務なのですが、従来の意味の努力規定と同じとして、放置すると厄介です。施行後民事損害賠償請求事件に大きな影響力をもつことになると考えられるからです。
通常労働者と比べて、
・職務内容
・人事制度の適用(異動等)
・契約期間(期間の定めなし、またはそのようにみなされる)
など分析した結果、通常労働者と同等であれば、通常労働者と同一の賃金決定方法によるよう努力すること。つまり、評価基準表など同じものを使うということ。


(まとめ)
「同一価値労働同一賃金」の流れを促進するものです。また身分格差是正を促進するものです。案外、経営者は乗り気、「正社員」は不安という状態かもしれません。
07年12月20日 | Category: General
Posted by: roumushi
詳細な民主党案でなく、簡潔な政府案に修正をかけた内容で成立した。連合談話は、法解釈の助けとなる。

法案
修正事項
連合談話


《就業形態の多様化、個別労働関係紛争の増加等に対応し、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資するようにするため、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則及び労働契約と就業規則との関係等を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。》

多くの職場では、判例法理を社会保険労務士が述べたとしても、裁判して結果が出るまでは大丈夫という慣れた見解がある。労働基準法はあくまでも強行法規で限定された性質のものであり、職場のルールとしての法律としては考えられていない。つまり、「規範」を示す法律すなわち労働=職場民法が欠落していた状態であった。「労務管理」によりそれは十分に補えるが、労働契約法の方がストレートである。

「規範」乃至は「公理」であることが民法の原則であるから、もはや裁判するまでもなく結果は出せるのである。これに関する紛争は、個別労使紛争解決機関で行なう。
07年12月04日 | Category: General
Posted by: roumushi