<厚生年金>給与記録改ざんが発覚 社保事務所の関与も

今度は標準報酬月額の問題が取り上げられ、いよいよ年金記録問題の全貌が明らかになった観がある。


≪その後は社員のほとんどをリストラし、経営も回復、社会保険事務所から連絡もなかった。ところが、03年に元社員の一人から「自分の標準報酬月額が過去2年分、30万円から(当時最低額の)8万円に下げられている」と指摘され、当時の社員全員の年金データが改ざんされていたことに気づいた。≫

たまに(身近でも)聞いたことがある話である。というのは整理解雇に移行するときのその回避策として考えられなくもないからである。給与を実際に8万とするなら反撥があるが、標準報酬月額を8万と偽装させて保険料を減らすのなら痛みも少ない。少し前までは、誰も年金記録なんて関心もない。ただし、納付義務を負う会社が勝手にしていたのは民事上の問題として残る。もちろん合意があれば組織秩序的にマシ(所謂「企業ぐるみ」の安定)というだけで、違法行為なので結局合意の有無を問わず無効であることはいうまでもない。

こうした年金減額分請求もしくは受給資格不足による損害賠償請求について争った裁判はあまり聞かない。審査請求では二義的な観点として出ることもたまにあるが、多くはない。第三者委員会はこういった日本社会の現実をみて混乱していると思われる。司法(当然法律を作る国会を含む)も行政も会社も国民生活も、もはや自家中毒で動きが取れなくなりつつあることを強く感じる。アメリカ社会を嫌っていたはずの日本が、知らずしてトラブル社会への途を歩んでいたのは皮肉な話である。