【元厚生次官ら連続殺傷】上司と部下…共に取り組んだ年金制度改革

≪昭和59年6月から60年8月までの約14カ月間は吉原さんが年金局長を、山口さんが年金課長を務めていた。
上司と部下の関係にあった2人が取り組んだのが、当時すでに目前に迫っていた高齢化社会の到来を控え、年金制度を将来にわたって安定的に運用していくための大改革だ。≫
≪主な改正点は(1)それまでバラバラに縦割りで運用されていた「国民年金」「厚生年金」などの土台部分を共通の基盤とする「基礎年金」制度の導入、(2)「国民皆年金」を実現させるために任意加入だった専業主婦を国民年金に加入させる、(3)標準的なサラリーマン世帯の年金受給額を、現役世代の69%程度になるよう保険料を段階的に引き上げていく−といったものだった。≫

この事件の真相については当然ながら私はわからない。このお二人の名前すら知らなかった。
ここ数年、社会保険事務所では色々と年金クレームが過激化しているという印象がある。誠実に対処すべきクレームであることが多いが、タクシー強盗や飲酒ひき逃げ事件など治安が顕著に悪化している国内事情である。まして年金問題はこれらとは性質上異なる。どこに文句をいっていいのかわからないという性質で、わからない人が社会保険事務所に因縁をつけてくる。日本の歴史をみればそのうち暗殺が起きるかもと思っていたところである。
わからないのが当然で、それは法律で決まったことということになる。では当時賛成票を投じた国会議員か、政党か、法案を提示した厚生労働省の役人かということになってくる。
今回の事件の真相は不明だが、一般的には「年金テロ」といわれている。国会議員等がこれを「民主主義への暴挙」と言っている。しかし、社会保険事務所で耳にするのは、「教えてくれなかった」「通知がなかった」とかいうものが多い。したがって、やはり本来の民主主義国家的には実際のところ法律ができていないというべきだろう。まして年金法は特に重要ながら難解であるため、国民のレベル管理が困難である。そもそも義務教育においてこうした生活関連法規に触れ始めたのがつい最近の話である。どういう国民を作りたいというイメージがこれまでなかったわけである。生活関連法規のない教育制度では真面目に勉強する必要も確かにないわけで、残念ながら脱落者の方が社会で良くも悪しくも活躍しているというのが実態である。社会人では稚拙な議論や行動が横行してしまうわけである。
とはいえ、社会保険関係の改正は国民の成熟を待てずに、待ったなしの段階にある。戦前では経済統制のため、隣組を活用した配給制度により国民を迅速に管理できたが、もはや回覧板や広報などの内容を周知する前提がたたない。乱世の時代というには早すぎるが、現行の国家デザインは綻び過ぎている。