人材力強化・雇用制度改革について

3. 雇用制度改革

《現状では大企業が人材を抱え込み、「人材の過剰在庫」が顕在化している。大企業で活
躍の機会を得られなくても、他の会社に移動すれば活躍できるという人材も少なからずい
るはずであり、「牛後となるより鶏口となれ」という意識改革の下、人材の流動化が不可
欠である。現行規制の下で企業は、雇用調整に関して「数量調整」よりも「価格調整」(賃金の抑制・低下と非正規雇用の活用)に頼らざるを得なかった。より雇用しやすく、かつ能力はあり自らの意志で積極的に動く人を後押しする政策を進めるべきである。》

国家が民間の労務管理施策に乗り出すことについては賛成であるのだが、上の説明は説得力がない。大企業で抱えていた過剰在庫が流出したため、日本の電化産業は落ち込んだという認識のためである。だからこそ国内での流動化を模索しているに違いないと思うが、しかし日本の電化産業を追い込んだ者等はより収入アップの進路を選んだように認識している。自らの意思もさることながら、好条件があったからである。こういう思い切った行動は、在庫としてくすぶる人材にはなかなか難しいものがある。非正規とか正規という問題に落とし込んでいるところに、説得力の弱さを感じた。

雇用調整助成金については私も疑問視しているものなので、その原資を成長戦略に有効使用する点はよいものと思うが、ここで出ている内容はそれほど有効とも思えない。「教育訓練」という言葉はジョブ制の普及にかかっており、そしてそれは横断型労務管理の普及が前提としてある。しかし日本人は組織作るにしても、めいめい独立したがるので、結局パラバラな状態で平衡を保つわけであるから、その民族的性質を捉えない限り、ムダでもあるし虚しくもある。政党政治とまったく同じなのである。横断する可能性がほとんど無い。「灯台下暗し」というべきか。

解雇金銭解決説はこれまた事情によりけりである。現行のあっせん等の解決金では低額のため、国が制度化して数年分であるとか決めてもらえれば、争う労力の必要もなくなり助かる。また、高額設定するのであれば、労働可能年数による計算式も若者にとってはありがたいものである。まぁそんな発言は出ていなそうだが。

ジョブ型雇用は限定社員ということで、仕事がなくなれば雇用契約終了ということらしいが、これは確かに人事権を制約する分公平であるといえる。有期工事での職人タイプといえるだろう。しかし、民間企業のクセとして、やはりジョブ型雇用の歪曲は避けられないだろうと思う。結局、あまり変らないはず。そんなわけで、国家は是が非でも日本の企業の雇用スタイルを変えるという強い意思がないといけないわけで、歴史に名を残すくらいの精神が必要である。解雇金銭解決説が選挙に影響が出るから引っ込めたそうだが、それでは困るわけである。日本の民主主義の地盤はそんな程度といえば終いだが、歴史はそう簡単には進まないということである。