「俺はデキる」という人ほど要注意?「残業代ゼロ」の対象はTHE PAGE 2014/6/3 14:00 (文責・坂本宗之祐)

《このテーマを話し合ってきたのは、政府の「産業競争力会議」。ここで5月28日、新しい労働時間制度の案が示された。提出したのは長谷川閑史氏。武田薬品工業社長で、経済同友会の代表幹事を務める人物だ。事実上、この案こそ日本企業の多くの経営者たちが「実現したい」と考えている制度と言ってよいだろう。
資料は計7枚で、タイトルは「個人と企業の持続的成長のための働き方改革」。この5枚目に「新しい労働時間制度の対象者イメージ」という、そのものズバリな記載がある。じっくりみてみよう。ここでは、たて軸とよこ軸のグラフが描かれ、働く人材を分類している。たて軸は「能力・経験・実績」。よこ軸には「業務・執行、労働時間の裁量度」。それぞれ、能力(裁量)が高い人ほど、上方向(右方向)に向かう。逆に、能力や裁量が低い人は、下方向(左方向)に割りふられることになる。》

厚労省がディーラーなど特殊業務に限定したことに対して、長谷川氏はまた案を出してきた。新案といっても従来の路線とまったく変化なし。

私が最も嫌悪する点は、長谷川氏が「理念」的すぎることである。日本におけるマルクス主義運動と同じ現象で、リアリズムに支えられていない。
したがって、どうしてもというならば、その合理的な必要性を現実データを提出して納得させなければならない。その発想すら欠けているため、一体長谷川氏は会社の実務面を何もできていないのではないか、肩書きだけで通る会社なのか、まぁ製品さえよければ経営は難しくないしネームバリューもしっかりしてるからだろうとしか考えられないのだが、説得力を求めるとすれば、そのやり方がよいということを証明する方法として、武田薬品工業もしくは関連企業を政府の管理下に移し、徹底して実験データを収集し、月次単位で経過報告を公開し、理念の現実化テストとして批判の対象とすべきである。結局このような実験を行わず、えいやと法施行していったため、本来机上で批判すべきであった問題がそのまま現実化しているわけである。
理論としては前に言ったが、労働時間と賃金はそれほど関連性はない。初任給だとか基本給だとかまた賞与について、誰が時間と関連させていると教えているのか。各企業が採用の難易を考え合わせたり、社員構成を考え合わせたり、資産状況を考え合わせて決めているのであり、断じて労働時間でこれらを決めていない。労働時間が関わってくるのは時間外手当という特殊な一部の計算のものでしかない。
加えて、裁量労働制が現にあるため、長谷川氏の目的は休日労働と深夜手当を支払いたくないということに尽きる。

私が求めるのは、現実面で弊害があるから法改正しなければならないとする必要性のみであるが、合理的な説明もなければその観点すらない。理念だけで実はカラっぽであることが最も懸念される次第である。マルクス主義運動そのものがどうのこうのというのではなく、理念だけで運動してしまうということへの不信と警告なのである。