医療費削減政策の中で、診療所・病院すべての医療機関の経営は苦しさを増してきました。収入が縮小してくれば、支出の削減に努めるのは当然ですが、医療機関には未だ回収されていない未収金はいったいいくらあるのでしょうか?

 厚生労働省が先日公表した報告書によると、医療機関の未収金は、平成17年に実施された四病院団体協議会の調査で約3,270病院における累計未収金額が1年間で約219億円(1施設当たりでは、約670万円)と指摘されており、なかでも、「産科」における1件あたりの未収金額が他の診療科目に比べて高く、また未収金の8割を「入院」分が占めていることがわかっています。こういった患者から徴収されるべき費用が回収できない理由として、「分納中、分納交渉中(16.6%)」が1番多く、次いで「回収の働きかけをしていない(12.1%)」、「生活困窮(10.6%)」、「悪質滞納(9.5%)」と続います。2番目の「回収の働きかけをしていない」というのは特に問題で、これらの未収金の回収対策を考える必要があります。

 最近では債権回収会社等の利用もありますが、病院のイメージを考えるとあまり好ましくはありません。実際いまの病院が行っている回収努力としては「電話催促」、「手紙催促」がほとんどであり、「個別訪問」「内容証明郵便」はその約5割、「少額訴訟」などの法的手段を積極的に行う病院は少ないのが現状のようです。病院内ですべてを行おうとすると、事務負担の増加などにより貴重な労力と時間が失われることにもなりますし、また法的手段を行うとなると弁護士報酬などのコスト面の問題も生じます。

 さらに、電話や訪問などにより払えない場合には、その事情について親身に相談にのること等が未収金の回収には一番効果的という意見もあることから、どんなに完璧な未収金患者リストを作成し、回収対策チームなどで組織的な対応をしても、事後的な回収対策には限界があるように思えます。

 そこで考えなければならないのが、事前的な回収対策です。いかにして未収金の発生を防ぐかというがポイントになります。その一つとして、各種制度の活用があります。生活困窮者への「一部負担金減免制度」、「生活保護申請の支援」、最近では「出産育児一時金の受取代理制度」、「高額療養費の現物給付制度」といった制度も実施されています。こういった制度を周知し、利用することで未収金の発生を抑えることが可能になります。また、クレジットカード支払いによる対応も良い方法だと考えます。

文責 医業部


にほんブログ村 士業ブログへ
↑↑ランキングに参加しています。クリックをお願いします。

Pronet Group HP
↑↑弊社ホームページもぜひご覧下さい。




なかのひと