平成18年4月1日開始事業年度から、役員報酬の決定と期中による変更、並びに極度に一部の役員に権限や持ち株割合等が集中している中小同族会社に対する税務上の取り扱いが改正になって、いよいよ本年3月決算の法人から改正後の厳しい判断の基に申告をしなければならなくなりました。
 ちなみに、制度の概要は次の通りです。

1-A.平成18年度改正の役員給与損金算入の取扱い
 法人がその役員に対して支給する給与(退職所得等を除きます)の内、損金に算入される範囲は、図表1に掲げる給与とされました。



1-B.平成19年度で行われる役員給与の取扱整備の内容
 1)定期同額給与について、職制上の地位の変更等により改定がされた定期給与についても定期同額給として取扱うことが明確化されます。
 2)事前確定届出給与について、その届出期限を役員給与に係る定めに関する決議をする株主総会等の日から1ヶ月を経過する日(その日が職務の執行を開始する日の属する会計期間開始の日から4ヶ月を経過する日後である場合には、当該4ヶ月を経過する日)とするほか、同族会社以外の法人が定期給与を受けていない役員に対して支給する給与についての届出は不要とされます。


2-A.平成18年特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度
 特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度は、特殊支配同族会社に該当する法人が、業務主宰役員に対して支給する給与の額(以下、業務主宰役員給与額といいます)のうち、給与所得控除額に相当する部分の金額は損金の額に算入しないというものです。(図表2)





2-B.平成18年度特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の追加
 特殊支配同族会社の次の1)2)の事業年度については、この規定は適用されません。
 1)その事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度(基準期間)の所得金額又は欠損金額及び業務主宰役員給与額などを基礎として計算した金額の平均額(以下、基準所得金額といいます)が年800万円以下である事業年度
 2)基準所得金額が年800万円超かつ3,000万円以下であり、かつ、基準所得金額に占めるその業務主宰役員に対して支給する基準期間の給与の平均額の割合が50%以下である事業年度
 注 新設法人などで、基準期間が無い特殊支配同族会社については、その事業年度の所得金額又は欠損金額及び業務主宰役員給与額などを基礎として計算した金額(以下、当年度基準所得金額といいます)により、上記1)及び2)と同様に判定します。

2-C.平成19年度特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の改定
 特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度について、適用除外基準である基準所得金額が1,600万円(現行800万円)に引き上げられます。
 この改正は、平成19年4月1日以後に開始する事業年度の法人税から適用されます。
(出典:「平成19年度 税制改正の改正点早わかり」速報版 山下勝弘著)

 これらの税制改正に対応する場合に、次のような視点を改めて考え直す必要があるのではないでしょうか?
 従来から、中小同族会社において役員報酬を決定する場合に、小規模企業であればあるほど、事前の予想収支を考えて、利益が若干出るぐらいに役員報酬を決定し、それらの役員報酬の金額が仕事の内容や常勤非常勤の別などをもとに検討して、税務上問題が無いようであれば支給してきた歴史がそれぞれの法人にあるようです。
 したがって、業績が予想通りにいかない場合には、期中で役員報酬を引き下げ、業況がよければ非常勤を常勤に変更するなどして、合法的に認められる範囲で役員報酬の総額を見直していた法人も多いと思います。
 これらは、内容によっては役員報酬の金額操作によって利益操作をしているとも見られかねません。また、業務主宰役員の給与所得控除額の課税所得加算の改正も、実質的には個人経営に類似した法人経営であって、法人成り後の節税効果を狙うことに課税の公平を行う為の改正であったと思います。

 いかに同族会社であっても、役員は法人から委任を請けてその仕事に応じて報酬を得るのであるし、利益を上げると税金が増えることに対する役員の心配は理解できますが、もっと前向きに経営を追求され、一定額以上の利益を上げて、健全経営を目指すことのほうが、役員のやりがいにつながるものと思います。

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