私たちは仕事柄、色々な医療機関の承継問題に直面する機会が多いのですが、どの医療機関の承継も一筋縄ではいかないケースが多いように思います。

 例えば医療法人の出資持分評価問題。ご存知の通り医療法人は利益の配当はできません。従って、長年経営を行ってきた医療法人であれば、最初に出資した資本金が何倍・何十倍の価値を持つ財産に変わっていることが多々あります。いざ、相続税の試算のために財産評価を行ったところ、もっている財産の実に75%以上が医療法人の株価だった、などというケースも目にしています。医療法という縛りはありますが、医療法人の出資持分評価額に対する対策及び持分引継ぎ問題は早めに着手して実行していくことが、承継時に発生するであろう相続税に対しての有効な対策だと思います。(上記は主に経過措置型医療法人のみに対してのことです。全ての医療法人に該当するとは限りませんので注記いたします。)

 それから建物・土地・医療設備・これに付随する管理サービスなどのハードウェアの承継問題があります。個人の診療所のみの承継であれば、それほど複雑では無いのですが、医療法人でも病院クラスになると、土地と建物の所有者が違ったり、医療設備を管理して賃貸している別会社をもっていたり、と運営形態がかなり複雑になっているケースが多く見受けられます。この状況をどう引き継ぐかが、承継するご兄弟が多い場合などでは問題になってくることもあります。

 また、診療方針や内部体制・人員などソフトウェアの承継問題もあります。ハードの面とも絡んできますが、お一人に対する承継であれば話は簡単なのですが、承継者が二人、三人となると、誰がどういう形で引き継ぐのかが問題になってきます。協力して今までどおりやれれば一番よいのですが、そうではないケースも見受けられますので、しっかりとした対策が必要になってきます。

 このような問題を解決するには、事前にしっかりとした将来のビジョンを立てて、引き継いでいくそれぞれの方に十分に説明して納得していただくことがまず必要です。そのためには、明確な経営状況の把握や院内の現状分析・将来予想などを、きっちり行っていくことが重要だと考えます。

文責 資産税部


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