12 月16 日(木)に平成23 年度の税制改正大綱が発表されました。

1. 法人税(中小企業)
中小企業を中心に記載します。なお、「中小企業」とは、資本金の額が1 億円
以下の法人(但し、大規模法人に一定割合以上の株式を保有されている法人は
除きます)のことです。

(1) 法人税率の引き下げ(=減税)
― 実効税率を現状の約40%から約35%に引き下げます。
(具体的には、法人税率を30%→25.5%とします。)
― 中小企業に適用される「800 万円までの所得に係る実効税率」も、27%
前後→23%前後になります。
(具体的には、22%から軽減されて現状18%になっている法人税率を平成
26 年まで15%とします。)
⇒平成23 年4 月1 日以後に「開始」する事業年度からの改正です。

(2) 減価償却の償却率変更(=増税)
― 定率法の償却率が、現在の約8割の率になります。
⇒平成23 年4 月1 日以後に取得する資産からの改正です。

(3) 欠損金の繰越控除の期間の延長(=減税)
現状、当期に利益が出た場合は、過去7年間に発生した損失と相殺する
ことができます。これを過去9年間に発生した損失にまで相殺できるよう
にします。
⇒平成20 年4 月以後に終了した事業年度において生じた損失から適用しま
す。
【参考:大規模法人(=中小企業「以外」)のみに適用される改正】

(1)欠損金の繰越控除の制限(=増税)
現状、当期に利益が出た場合は、その全額を、過去7年間に発生した損
失と相殺することができます。今後は、当期の利益の8 割までしか、過去
の損失との相殺ができなくなります
(つまり、過去に大損失があっても、当期の利益の2割には課税されます。)

(2)貸倒引当金の制限(=増税)
貸倒引当金制度の適用をなくします。平成25 年までは、引当金計上額を段
階的に減らします。

2.所得税
(1) 給与所得控除額の見直し(=増税)
給与の額面が1,500 万円を超える方の給与所得控除額は、245 万円で頭打ち
になります(今までは、給与が増えるほど給与所得控除額が増加し、給与所
得者に有利になっていました)。
更に、役員の給与は、2,000 万円を超えると、「上記の245 万円から、一定
の金額が控除された金額」が給与所得控除額となります(つまり、給与が増
えるほど控除額が減少=給与所得者に不利、になります)。
⇒平成24 年1 月からの改正です。

(2) 勤続5年以下の役員の退職所得課税の見直し(=増税)
退職金には、①退職所得控除額を控除した残額の、②2分の1に課税する、
という優遇措置があります。勤続年数が5 年以下の役員が受け取る退職金に
はこの優遇措置がなくなります。
⇒平成24 年1月からの改正です。

(3) 成年扶養控除の対象の見直し(=増税)
合計所得金額が400 万円(給与収入568 万円)以上の方が扶養する、23 歳
以上65 歳未満の方(但し、障害者や要介護認定を受けている人を除きます)
は、扶養控除(38 万円)の対象ではなくなります。
⇒平成24 年1月からの改正です。

(4) 金融商品税制(=減税継続)
上場株式等の配当、売買益に係る税金10%の軽減税率(本来は20%)を2
年間継続します(平成24 年12 月まで)。

3.相続税・贈与税
(1) 基礎控除額の改正(=増税)
現行:5,000 万円 + 1,000 万円×法定相続人の数
改正:3,000 万円 + 600 万円×法定相続人の数

(2) 死亡保険金にかかる非課税限度(=増税)
現行:500 万円×法定相続人の数
改正:500 万円×法定相続人(未成年者、障害者又は相続開始直前に被相続人
と生計を一にしていた者に限ります)の数

(3) 相続税の税率(=増税)
現行 税率 改正 税率
1,000 万円以下の金額 10% 同 左
3,000 万円 〃 15% 〃
5,000 万円 〃 20% 〃
1 億円 〃 30% 〃
3 億円 〃 40% 2 億円以下の金額 40%
3 億円 〃 45%
3 億円超の金額 50% 6 億円 〃 50%
6 億円超の金額 55%

(4) 未成年者・障害者控除の引き上げ(=減税)
控除額を現行制度の2 倍にします。
⇒上記(1)~(4)は平成23 年4 月1 日以後の相続から適用されます。

(5)暦年贈与の贈与税の税率(=一部減税)
① 20 歳以上の者が父母や祖父母から贈与を受けた場合の税率
現行 税率 改正 税率
200 万円以下の金額 10% 同 左
300 万円 〃 15% 400 万円以下の金額 15%
400 万円 〃 20% 600 万円 〃 20%
600 万円 〃 30% 1,000 万円 〃 30%
1,000 万円 〃 40% 1,500 万円 〃 40%
3,000 万円 〃 45%
1,000 万円超の金額 50% 4,500 万円 〃 50%
4,500 万円超の金額 55%
② ①以外の場合
現行 税率 改正 税率
200 万円以下の金額 10% 同 左
300 万円 〃 15% 〃
400 万円 〃 20% 〃
600 万円 〃 30% 〃
1,000 万円 〃 40% 〃
1,500 万円以下の金額 45%
1,000 万円超の金額 50% 3,000 万円 〃 50%
3,000 万円超の金額 55%
⇒平成23 年1 月からの改正です

(6)相続時精算課税制度の適用要件の見直し(=減税)
①受贈者の範囲に、20 歳以上である孫を追加
②贈与者の年齢要件を60 歳以上に引き下げ
⇒23 年1 月からの改正です。

4.その他
(1)納税者からの減額申告が可能な期間の延長(=納税者寄りに)
現在、納税者から「納税額の減額」ができるのは、過去1年分ですが、
これを過去5年まで可能とします。
なお、税務署等から「納税額の増額」ができる期間も過去3年から過去
5年までにします。
これにより、納税者と税務署等の間のアンバランスが解消されます。
なお、詳しいことは、弊社宛にご質問下さい。なお、当社HP でも、今後の
着目点等を随時掲載しますので、ぜひご覧下さい。

平成22 年12 月16 日
文責:税理士法人プロネット
   事業承継部 / 資産税部

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