日本の創業経営者たちにも強い影響を与えた、アメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは、幼少時代はよく人に仕え、成功してからは人をよく使った人である。
 そのA・カーネギーが、ペンシルベニア鉄道に、鉄の塊であるレールを、「なんとしてでも、売り込みたい」と熱望していたときのこと。もちろん先発の、強くて大きな競争企業がいる。手ごわい競争相手でもあった。
 そして、A・カーネギーは、プレゼンテーション(企画提案)をした。「レールをより早く運び入れるため、御社のレールの受け入れ場所に近いところに、御社専用の大きな工場を作り、御社が求めるレールを、御社が求める量だけ、御社が希望するときに、タイムリーに運び入れるようにします」と提案した。しかしこの程度の提案なら、競合メーカーもしていた。
 ところがA・カーネギーの提案には、つぎの提案が加えられ、個性的な提案になっていた。
 「……なおこの工場の名は、『J・エドガー・トムソン製鉄所』と命名する予定であります」
 なんとその工場の名は、肝心の、ペンシルベニア鉄道の社長の名前だったのである。
 結果はA・カーネギーの勝ち。厳しい売り込み競争に競り勝ちしたのである。相手はなぜ買ったのか。もはや説明は要らないでしょう。売り込み先の“トップの心”を見事に捉えたからである。
 ところでアメリカの教育家である、D・カーネギー(似てはいるが別人)が、このA・カーネギーのことを、このように書いている。
 「A・カーネギーは、鉄そのものに関しては、ほとんど何も知らなかった。しかし彼は、“鉄のプロたち”を集め、彼らの能力をフルに活用したところが非凡だった。」
 A・カーネギーの墓碑銘には、「私より優れた者を集めた者ここに眠る」と刻まれているのを見ても、そのへんの事情が理解できる。
10年09月03日 | Category: profile
Posted by: mao
◆時流に背を見せる問屋商法
 過去の習慣を、そのまま引き継いでいる。“惰性の経営”は、会社の成長を阻害し、会社の体力を弱め、やがて会社を破壊する方向に追い込む。
 熊本の食材問屋で、ある社員が社長を乗せた車で鹿児島営業所に向けて出発した。何年も鹿児島を訪ねずに、「エアコンは贅沢だ」といって、エアコンなしの車両営業を続けさせている営業の現場の実態を、社長に見せるためだった。
 鹿児島に着くと、これから商品を配送するという営業車に、社長と一緒に同乗し出かけることにした。鹿児島市内は、「きょうは桜島の噴煙はない」と思われる日でも、ちょっとした風向きの変化で火山灰が空に舞うことは多い。
 この日も、そのような日だったが、その社員は頃合いを見て車を停めさせた。
 「社長、後ろに積んだ商品を見てみましょう」
こういって下車するや、ダンボールに入った商品を見た。ダンボールの表面を社長の手で撫でてもらった。いやでもザラザラだ。火山灰の被膜である。
 指でなぞると、薄い灰の被膜に指先の幅で筋が通った。
 これが真夏だと・・・。社長にも営業車にエアコンが必要な意味がわかったようだ。
 鹿児島営業所の社員たちは喜んだ。実直というべきかお客様のために、エアコン装備を会社に要求も、拒否されていた社員たちは本当に喜んだ。
 「これで、得意先に着く手前で車を停め、火山灰を払い落とす手間が省けました」と。

◆惰性の経営は利益を食う
 上に紹介した例は、極端かも知れないが、“惰性の経営”の象徴というべきだろう。
 さてAB両社は、ファッション卸という同業でありながら、成長会社と衰退会社に、極端に分かれてしまった。PC(パソコン)かぶれも問題だが、PC知らずはもっと問題だ。
 A社は定番商品の多くは、ネット受注である。受注したPCは他のPCに連動し自動的に、経理部門では受注として記録され、締切り日には請求書として印刷される。商品管理部のPCは、出庫伝票として印刷され処理される。営業部門のPCは、納品明細書や納品書としてアウトプットされ営業マンが商品と一緒に持って出かける。いまや当り前の処理だ。
 ところが同業のB社の受注体制はいまでも、電話とFAXが受注の柱である。
 社長自身は、携帯の用途は電話オンリー。ネットやメールは、自分の認知範囲をはるかに超えている。「IT時代だ、ネットを生かせ」と助言すると、いまこそ自社の“準対面商法”に価値があるといって耳を貸さない。
 そういう考え方だから、部下にネットに詳しい者がいても生かし切れない。
 その一方でA社がネット活用のお陰で、コスト(特に人件費)の大幅削減に成功している事実には思いが及ばない。当然両社の利益率には大差が生じている。
 このB社も、熊本の会社に劣らず、“惰性の経営”の経営を続けている。
 思わず、「脱皮できない蛇は死ぬ」という箴言(しんげん)を連想してしまう。
10年08月02日 | Category: profile
Posted by: mao
◆知的財産はタダではありません
 テレビで馴染みの骨董鑑定家の中島誠之助さんが、著書の中で述べている。
 「骨董の鑑定をタダで済まそうとする人がいる。鑑定にも元がかかっています。鑑定にも金を払う必要があります。鑑定はタダというのはいかがなものでしょうか?」
 アメリカでのこと。ある人が、知り合いのドクターに電話し、家族の症状で相談をした。ドクターの的確なアドバイスで、症状は改善した。数日すると医者から請求書が届いた。
 しかし「高いなあ!」と思った。そこで、知り合いの弁護士に電話し意見を求めた。
 すると今度は、その弁護士から請求書が届いた。
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 以上の例話は、使い古されたもので、何も目新しいものではない。
 「情報には原価がかかっていますよ・・」という教訓である。
 情報に対する感覚(知的財産感覚)が未成熟だと、聞いてはならない相手の意見に、振り回されることであり、中には会社をツブす人さえいる。
 意見を求めるなら、利害関係のない人にしなければならない。
 利害関係者に意見を求めると、色付き意見が戻ってくることが多い。しかし、一方色付き意見に振り回されるようでは、経営感覚は、相当ニブイという事かもしれません。

10年07月01日 | Category: profile
Posted by: mao
◆冬の来ない四季はない
 マクドナルド(MAC)の、最新の連結決算によると、過去最高益を更新ということだ。しかも2期連続という。かつて赤字に転落して苦しんだMACが、ウソのようである。
 ファミレスにしても、その他の外食フード業界も、消費不況に加えてデフレ圧力が加わり、厳しい環境にありながら、過去最高益を更新というニュースは、朗報である。
 ところがMACは、時を同じくして、“全国400店舗以上を閉鎖する”という。
 「この調子のいいときに、一体なぜ店舗閉鎖するの?」
 一般的には、こう思う人が多いのではなかろうか。
 ところでよく使われる表現に、“建設的破壊”という言葉がある。MACの店舗閉鎖は、まさにこれに該当するようだ。MACによれば、“収益力の改善”に着手するという。
 しかしここでは別の視点から、この問題を見てみようと思う。
 一般には、“過去最高益を更新”という結果を得れば、「いまのやり方がいいから、いい結果が出たんだ。だから現状を維持、現状を続行だ・・」という方向に、進むのではなかろうか。
 名古屋市内に、300人規模の本社工場を置く会社にS社があった。受注残が3カ月間もある。毎日残業を続けても、3カ月先までの受注で会社は、残業、残業また残業という状態。
 そうしたある日、ある経営コンサルタントが毎日が仕事で忙しいという経営者と、ゆっくり語り合う機会が訪れた。
 そこで、吉川英治の言葉を引用し、こんなことを話した。
 「“朝の来ない夜はない”と、作家の吉川英治は言ったが、冬の来ない四季はない。当社は、春爛漫の季節だが、いずれ冬は来る。当社の受注比率は、自動車業界が98%。その他が2%。いまから手を打って、この98%という異常な構成比を是正する必要がある・・」と。

◆最悪の状況を想定し最善の手を打つ
 ところが社長と専務(兄弟)は、笑いながら言った。
 「先生は心配のし過ぎですよ。いずれは冬(厳しい経営環境)が来るかも知れませんが、心配の早取りですよ・・」
 こういって、まるで聞く耳はない。
 「すぐに結果が出せるものじゃないからこそ、業績がいいときに着手する必要があります。自動車業界ベッタリは危険・・」
 こう語っても、受注残3カ月という実績の前では、社長兄弟は聞く耳は持たなかったそうだ。
 しかしこのS社は、現在は経営破綻で消滅している。
 ある自動車メーカーからの要請で、カナダに工場を作ったのはいいが、品質管理レベルが崩れ、品質低下が障碍になり、これがきっかけでずるずると受注が減りはじめ、そのまま冬どころか大暴風雨の状況に転落し、経営は破綻した。
 経営の安定期に、最悪の状況を想定し最善の手を打つ。わかっちゃいるけど、イザとなると、MACのような発想はなかなか出ない。MAC戦略は、最高の経営教本の一つと思える。
10年06月01日 | Category: profile
Posted by: mao
◆雨宮敬次郎の耳の働き
 雨宮敬次郎。山梨県出身で、13歳で仲買人を始めた甲州財閥の一人である。
 その敬次郎が、つぎのように語っている。
 「私はどんな商売を始めるときも、まず自分には、相応の知恵はないものと思い、どんどん人に尋いて知恵を集めることにしている。知恵を盗むんだ。
 盗むというと人聞きがよくないが、知恵を盗まれて怒る人間もいない。困る者もいない。
 特に知恵のありそうな人間には、自分はこんなことをやろうと思うがと話すと、向こうは得意になって、自分ならこうするとか、ああするといって乗ってくるものだ。
 このように蜜蜂のように少しずつ集めた知恵を、私の計画にまとめ上げると、これはもう立派な、雨宮方式の事業や経営計画になるんだ」
 いつかイトーヨーカ堂(現・セブンiグループ)の創業者、伊藤雅俊さんが言っていた。
 「わたしは、自分ではわからないことは、どんどん人に尋ねることにしています。すると相手は、喜んでいろいろ語ってくれます。尋くというのは、とても勉強になります」

◆耳が口より発達した人が、勝者になる確率は高い
 ある私鉄に飛び込んで、みずから命を絶った社長の、懺悔に近い話を聞いたことがある。
 「同じ商圏の中に、四国から上京したという、新しい住宅会社T社ができました。そのT社の社長は、挨拶を申し上げたいと腰を低くして、その社長を料亭に招きました。
 おしゃべりのその社長は上座から、ペラペラとしゃべりました。」
 いまや両社は大逆転。T社は地域ナンバー1。その社長の会社は空中分解直前。
 「口は一つ耳は二つ、しゃべることの倍聞くためだ」という格言がある。
 敬次郎は、「自分には、相応の知恵はないもの」と考えたが、現実には逆に、「その程度の知恵は自分にはある、いちいち人に尋かなくてもいい」と考える人が多いように思う。
10年05月12日 | Category: profile
Posted by: mao
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