私見たっぷりなのですが、事業承継とは、会社社長が、

(1)会社から離れて「自由」になること、そのために、
(2)会社に蓄積させてきた利益を社長に「還元」すること

だと考えています。
具体的には、
(1)長年経営を行い、会社のことしか考えなかった社長が、会社から離れて自由になる、そのために、「役職(取締役等)」を手放し、「株式」も手放します。

(2)その見返りに、手切れ金のような形で、退職金等の資金を手にすることができます。それによって、ますます会社から離れて自由になり、今までとは違った生活ができるようになります。

(本当は、(1)、(2)ができるようになるまでが事業としては大変なのですが、ここではその過程については触れません)

 その観点からみると、事業承継対策の大きな柱である、
○社長への退職金の支給
○金庫株(会社が、社長保有の自社株式を購入)
○M&A(社長が保有株式を第三者に売却、MBO等)
は、いずれも、上記の「自由」「還元」の要素を満たしています。

 その他の対策、一例ですが、
○生前贈与
○株式評価減対策
○持株会等の親族以外への一部譲渡
○遺留分対策 等は、
「自由」「還元」の要素の一部を満たす方法といえます。

 先日も、創業社長の奥様とお話しする機会がありました。夫の事業が成功し息子さん夫婦が会社を継いで、会社は安泰ですが、会社株式と金融資産は創業社長夫婦がお持ちとのことです。その奥様は「会社の株式とお金はいずれ息子夫婦に渡すことになるのは判っています。でも、私達の今までの苦労を考えたら、息子といえどもすんなりと渡すものか、というのが本音なんです」と言われていました。この方の場合も、創業社長夫婦に対する「自由」「還元」をキッチリと形にしたうえで、一方、将来発生する相続税の負担を軽くするという考え方で、じっくりと相談させて頂く必要があると思います。

さて、今年の税制改正で、「相続税、贈与税の8割納税猶予制度」が制定されました。この制度は「十分に検討の価値のある制度」とは考えていますが、「自由」「還元」の要素は満たしていません。創業社長に8割納税猶予の話をするとすんなりと満面の笑みでこの方法を選択する方は少ないのですが、その理由はこんなところにあるのかも知れません。そういう意味では、事業承継対策は、8割納税猶予だけで終わらず、「自由」「還元」の要素を満たす方法を併せて行う必要があると思います。

文責 事業承継部


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