医療機関の後継者に対する引継ぎという業務を本格的に始めて以来、つくづく感じるのは、『経営改善なしに承継の成功はなし』ということです。後継者が引き継ぎたくなる医療機関をいかに創り上げて、スムーズな承継を行うか?非常に難しい課題です。特に現経営者が高齢の場合、激変が続く医療業界の中旧態然の経営方針に固執してしまったばかりに、経営状態が悪化しているケースが多く見受けられます。

我々は税務・会計の専門家ですから、経営状態の改善を進める際にも、ついつい採算面の改善だけに目が向きがちですが、医療機関の経営改善は「採算面だけ解決すればいい」という甘いものではありません。
採算面の改善は、内部の協力、即ち内部体制の整備なしには行えません。様々な職種の人間が医療というサービスを作り上げる医療機関においては、目先の採算に拘ったリストラが診療に影響をきたします。診療に影響をきたせば医療サービスの低下を招き、医療サービスの低下は即座に医業収入の低下に直結します。とは言え、不必要な人材まで丸抱えする必要はありません。内部体制の整備・再構築にあたっては、診療科ごと、また、外来・入院ごとの生産性を分析する必要があります。この上で、生産性の悪い部門について優先的に人員整理を進めるか部門ごと閉鎖する選択肢が初めて浮上するのであって、経営者の感覚で行うものではありません。
また、医療機関に限らず経営の悪化している企業は、内部の指揮命令系統が崩壊している場合が多く見受けられます。従業員と経営陣の近未来のビジョンがバラバラで、ホウ・レン・ソウのない組織体制が原因です。意識改革が求められるのは当然のことながら、指揮命令を一括して行う経営者直属部署の創設も検討の余地があるでしょう。

経営改善は、「なぜそうなったのか?」原因分析を迅速に行い、原因を止血をすることから始まります。やがて大手術になるであろうその改善を成功させるか否かは、初期段階での診断や止血が的確なものであればあるほど成功の可能性が高くなります。現状、経営が悪化していない医療機関や企業においても、『内部体制の崩壊』は経営悪化を計る一種のバロメーターです。悲劇=倒産を招く前に早めの処置が肝心です。


 文責:医業部


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