昨今のドル安の動きを受けて、弊社のお客様の中にもデリバティブ取引の損益の変動でお困りの方がいらっしゃいます。
 今回は、難しいと考えられているデリバティブ取引について、可能な限り判りやすく説明したいと思います。

1.そもそも  そもそも「デリバティブ取引」って何なのでしょうか。
  英語で「derivatives」と書き、「金融派生商品」と訳されています。
「de」とは「から出た」という意味の接頭詞、「riv」は「river」つまり「川=本流=金融の世界では借入や預金のことです」、その後は、接尾詞です。
  つまり、金融の本流である借入や預金から出てきた商品ということです。典型的なものが、借入から元本を除いて、金利だけを取引する「金利スワップ取引」です。以下に、基本的な類型を示しました。ポイントは、必ず「何か」と「何か」を「交換」する形になっているということです。従って、デリバティブ取引を見る場合には、「何を交換するのかな」という切り口で考えると判りやすくなるかもしれません。


他に、ノックアウトやノックイン等の言葉が出ることがありますが、これは、上記に付加された、いわば「ソフトクリームのトッピング」のようなものです。(後ほど、少し触れます)


2.デリバティブ取引の税務処理
 (原則)
決算期に、まだデリバティブ取引が残っている場合(=その一部でも決済されずに残っている)には、残っている部分について時価評価をして、その損益を計上します。
 具体的には、銀行等から送られてくる「時価評価のお知らせ」をもとに決算時において損益を計上するのです。

(例外1:繰延ヘッジ処理)
 資産、負債等の価格の変動リスクを回避(以下、「ヘッジ」といいます)する目的でデリバティブ取引を行った場合には、時価評価をしない方法を採ることが可能です。
 但し、A価格の変動のある資産、負債が貸借対照表に計上されている、又は、B「予定取引」と言って「そのヘッジ対象取引が行われることが、過去の実績や会社の状況等に照らして、予定されているといえる」、ことが必要です。
 具体例でいえば、フラット為替予約=クーポンスワップ=包括的長期為替予約といわれている取引で1年超のものは、一般的には予定取引には該当しにくいと考えます。
 加えて、Aリスク管理に関する社内規定を定めて、契約時に、リスク回避のために行った旨を明らかにし、Bデリバティブ取引の有効性の判定(ヘッジ対象の資産、負債等とデリバティブ取引の時価の変動が概ね同一であることの判定)を行うことが必要です。

(例外2:金利スワップ等の特例処理)
 借入、預金等の金利の変動リスクをヘッジする目的で行った金利スワップ、金利キャップ、金利フロアー取引等は、時価評価をしない方法を採ることが可能です。
 但し、借入、預金等とデリバティブ取引の元本金額、終了の日、金利の種類等が同一であることが必要です。
 具体例でいえば、短期プライムレートでの借入をTIBORベースの金利スワップでヘッジした場合には、この特例は適用できません。
 なお、この取引も、契約時に、リスク回避のために行った旨を明らかにすることが必要です。


(例外3:振当処理)
 外貨建資産、負債の価格変動リスクをヘッジする目的で、先物外国為替契約等(いわゆる為替予約です)によりその円貨額(円換算額)を確定させた場合は、時価評価をしない方法を採ることが可能です。
 但し、そのヘッジ対象取引である外貨建資産、負債が貸借対照表に計上されていることが必要です。
 なお、この取引も、契約時に、円換算額を確定させるために行った旨を明らかにすることが必要です。


 次回は、なぜこういう税務処理をするのか、デリバティブ取引を行うかどうかの判断基準等について記載します。
文責:経理サポート部



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