07年10月20日

審査請求

労働基準監督署長が「不支給決定」の「処分」をしたことについて、不服がある場合には、審査請求することができる。
「不(支給決定)通知書」には、次のような文言があります。

《「本件処分」に不服がある場合には、本件処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に表記の労働基準監督署を管轄する都道府県労働局の「審査官」に対して審査請求する事ができます。−以下略−》

= 条文 =労働者災害補償保険法
≪(審査請求等)
第三十八条  保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。
2  前項の審査請求をしている者は、審査請求をした日から三箇月を経過しても審査請求についての決定がないときは、当該審査請求に係る処分について、決定を経ないで、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。
3  第一項の審査請求及び前二項の再審査請求は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。≫

労災認定:盛岡の会社員自殺「パワハラが要因」 労保審、補償不支給取り消し 

2002年に不支給処分があり、審査官は請求棄却、2003年3月に審査会に「再審査請求」し、2007年10月に原処分(不支給決定)が取り消された。
かなり長くかかったものである。その間の、パワハラや過重労働、精神疾患などが労働行政における最重点事項となったことが大きいと思われる。
なお、審査会の裁決を経なければ「保険給付に関する処分」については裁判することができないが、再審査請求後3ヵ月経過した場合にはすることができることとなっている。
労働保険、社会保険に関しての判断は専門性が求められるため、通常裁判ではなく審査請求により処理するものである。社労士か弁護士が代理している。各保険法によって扱う内容が異なる―労災については「保険給付に関する処分」−。
07年10月20日 | Category: General
Posted by: roumushi
メンタルヘルスという言葉はどうも軽く受けてしまいがち。しかしその実体は、言葉の印象に反して、非常に重い。

自殺:原因は上司の暴言 「パワハラで労災」初認定−−東京地裁   ◇「居るだけでみんなが迷惑」「給料泥棒」


≪係長の発言について、判決は「キャリアばかりか人格や存在を否定するもの。男性のストレスは通常の上司とのトラブルより非常に強かった」と指摘。遺書に記されていたことも踏まえ、係長の発言で男性がうつ病を発症したと認定した。≫

なぜ仕事上のことで、「人格や存在」が攻撃されるのかが最重要課題。当会社が終身雇用制であり、社会ルールよりも自治ルールを優先させていた空気があったということです。ちなみに、最近リンチ事件が注目されてきてますが、現行のやり方では防げません。防ぐどころか、追い風なのです。
(自治の尊重は所謂「昭和文化」の代表的なもののひとつで、労務管理でいうところの「ザ・インフォーマル」にあたります。明治、戦後に日本は急成長を遂げましたが、それだけ日本は粛清能力の高い国だということです。ただし、この粛清は特定の指導者ではないかたち(藩閥、軍部・官僚、隣組)で行われた故に、日本にはファシズムがないと分類されていることが多いようです。それと、戦争末期において-総力戦という国際的条件もありましたが、農民や学徒等を十分な教育訓練する余裕もなく、とにかく秩序形成を早期に完成させようとしたところから「軍隊教育」=シゴキ等)がはじめられました。それまで近代軍隊であったところ、にわかに前近代的=村落共同体的な合理性に欠けた組織になってしまいました。少なくとも、近代的組織のまま戦後を迎えたであったならば、こうした後ろ向きの企業組織状態は少なく生じたものであろうと思われます。)

≪◇静岡労働基準監督署の話
 今後の対応は、判決内容を検討し、関係機関とも協議して判断したい。≫

監督行政と裁判所とでは、アプローチの仕方が異なります。監督行政は判例、学者の判断指針当に基づいて一律的な認定ができるような体制を整えていますが、裁判所は具体的な事件について審尋してあらためて理論的に組むという姿勢です(類似事件については人事制度に連なる前例主義という点もありますが)。よって、今回の判例を、監督行政の用いる判断指針に組み込む作業を検討しはじめていると思われます。
07年10月16日 | Category: General
Posted by: roumushi
「赤福」350人が自宅待機、伊勢の直営店も休業のまま

≪同社総務部によると、12日に出荷した「赤福餅(もち)」約1万1000個は、東京の一部を除いてほぼ回収を終え、同日午前に生産した商品と合わせて、本社工場内の「ストック場」に運び入れた。すべて焼却処分する予定という。≫

これについては以下の記事がまとまっている。
消費期限や製造年月日を偽って表示、販売

諸種のルール違反があったわけだが、ただ老舗として最低限衛生上の問題だけは危惧するプライドがあったと見受けられる。これがなくなっておれば、雪印と同じ運命を辿る。
しかし問題は名門商家としての意識である。当製造販売者が自ら課して謳っていた「当日製造当日販売」原則がキャッチコピー以外ではなかったことである。これもおそらくはプライドのある従業員(「大番頭」)の内部通報だと思われる。尤も、現在放映中の『24』の如くの、組織内の凌ぎ合いも考慮されうるだろう。

さて、「当日製造当日販売」原則は厳しい。コンビニでは弁当を毎日大量に廃棄されているものだが、当商品がどれほど衛生的に期限が設けられるべきかを私は知らない。
各販売店から一斉に撤去され、12日製造分はすべて焼却処分するところは流石だと言いたいが、やっぱり「もったいない」と言わざるをえなかろう。実際には、「当日製造」で売れ残ったものすべてがそうなるべきものなのである。といって、「本当の所の事」をキャッチコピーにしたところで、ここまでの「信用」を稼ぎ得たであろうか。
07年10月13日 | Category: General
Posted by: roumushi
今回の10.1改正は、雇用情勢(社会情勢含む) の現状分析を中心に据えて改正されたものであり、従前の取扱いとはかなり異なる点があります。
註−資格等は原則10.1以降の状態で判断。一部経過措置あり。なお、以下はまだ確認中のものもあります。

1、被保険者区分の1本化 (雇用情勢の変化、非自発的離職者の保護、不当受給措置)
従来の被保険者は「一般」「短時間」の区別がありましたが、廃止。用紙も改訂。離職日前2年間に被保険者期間11日ある月が12必要。非自発的離職、特定受給資格者は1年間に6もしくは2年間に12。

2、受給資格要件
A社で受給資格を得て受給せず、B社で受給資格を得る前に離職した場合、従前はまだA社だけの資格で、その受給期間内であれば給付を受けることができましたが、今回はその取扱いをしなくなりました。B社で資格なし、A社で資格ありのケースでは、最終B社の資格なしという判断となります。
・受給資格なくとも離職証明書は提出。
・B社の履歴は管理されているため、隠してA社だけで受給しようとするとハネられる。

「2枚以上の離職票のある求職申込者につき、後の離職票(被保険者期間が15日未満である場合を除く) の離職理由を判定した上で、順次遡って被保険者期間が12月、あるいは6月となるまで通算する。なお、前後の離職票が単独で受給資格を満たしているかどうかは影響を与えない。」
・B社で法的な試用期間(14日)内であれば、A社の資格は生きているように読める。

少し複雑で、審査請求が増えるカモシレナイ。

3、1年未満の有期契約で、更新を期待させていたが、更新されなかった場合は、特定受給資格者として認定。ただし、1年以上勤務している者は除く。
なお、有期契約で短時間労働者は被保険者にならないので留意。

4、被保険者期間が6ヶ月以上12ヵ月未満の者で、正当な理由により自己都合退職した者は、特定受給者として認定。但し、暫定措置。
従前では、所定給付日数はそのままで給付制限をしなかった扱いの者。ちなみに、「正当な理由」の内容はかなりレアケースのもの。

5、外国人の資格取得・喪失に際して、雇用状況報告を義務化。(雇用対策法改正 ※法律条文として)
特別研修区では『女工哀史』と同じ問題が起っており、逃亡者が相次いでいることや、不法就労化の阻止など治安問題が絡んでいるみたいである。
実務としては、資格取得・喪失届へ登録証明書にて国籍・在留資格・在留期限等を記入することが報告となる。登録証明書の写しなど添付する必要はなし。また、雇用保険の適用でない者については、様式第3号の状況届を行う。人権について配慮すること。
07年10月10日 | Category: General
Posted by: roumushi
阪急交通社で派遣添乗員にサービス残業、労基署が是正勧告

参照条文
≪労基法第38条の2 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。≫

みなし労働時間制については、おそらくほとんどの事業所が適用できないのではと思われます。
というのは、上記記事には触れられていませんが、条文中の「労働時間を算定し難いときは」という条件がポイントで、是正指導された会社では会社と従業員間で報告書をやりとりしていた (つまり、勤務中管理下にあり、時間管理できる体制であった) ため、みなし労働時間制は適用しないということになります。
さらに、現在では会社は従業員にケイタイを持たせて活動させておりますので、当然時間管理できるわけです。したがって、この場合もみなし労働時間は適用しないことになります。

本日の朝日新聞の記事はこの点をもう少し詳しく書いてありました。そこには、旅行業界では「慣行」となっていて寝耳に水の是正指導のようです。業界の慣行というものは長年産業自治のような配慮があったかと考えられますが、最近ますます公益的な観点から批判の対象となっております。慣れた労務体質を根本的に変革するのは大変なことですが、日本国の法律に合わせていくべきです。
これは「人材破壊」と緊密な関係にあり、雇用環境が不安定となる中で、従来の集団的自治が意義を失い、法律が前面に出てきた現象です。日本の場合、名目だけでなく実質的にも「法治国家」となったのはつい最近とみてよろしい。
07年10月04日 | Category: General
Posted by: roumushi
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